2nd Dance -第2幕-第2幕 シ ン カ 7月8日、霧谷プロダクションでは社長の霧谷 健太郎(きりたに けんたろう)が、織田亜美に一方的に話していた。 「亜美、何だ、この手紙は・・・(話が長いので以下略)。」 亜美が、話を聞くのに疲れてきた頃、部屋がノックされ人が入ってくる。 「失礼します。警察ですが・・・」 入ってきたのは、言うまでもないが、神尾哲幸と神尾真理であった。彼らは親子で、今まで多くの事件を解決してきた。ただひとりの怪盗の捕縛を除いては・・・ そして、真理は特に怪盗の捕縛にかなり熱を入れている。この前の事件でより熱が入ったか、それとも・・・? 「私は今回の警備の責任者である神尾哲幸と申します。捜査のためにいろいろお伺いすることもありますが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。」 哲幸は、そう言って話を始める。 話が一段落したところで、真理は思いついたようにこう言った。 「織田さん、私にペンダントを見せていただけませんか。」 「あなたは?」 「神尾真理、探偵です。」 「・・・これよ。」 亜美は、しぶしぶペンダントを渡す。 「このペンダントに発信機をつけてみない?」 真理は提案する。 「考えておこう。」 哲幸はそう答えるだけであった。 その後2人は、いくつか確認し帰っていく。 それから数日は平和に過ぎて、7月19日、天文坂高校の終業式を迎える。 「それじゃあ、滝河君。高瀬さん。また2学期にね。」 真理は、涼と雪絵に挨拶をする。 「そうだな、まぁ・・・そう言っても、すぐに会うかもな。」 涼は、そう答える。 「え?」 驚く真理。 「何を驚いてるんだよ。夏休み中に町で会うかもしれないだろ。」 涼は、何に驚いているんだという表情を見せる。 「そ、そうよね。・・・ごめんなさい。わ、私ったら・・・」 「涼。神尾さんは外国にいたから、あまり夏休みに日本に帰っていて、クラスメイトと会うって事がなかったかもしれないでしょ。」 雪絵は、真理をフォローするようなことを言う。 「そうだったな、神尾は去年まで外国にいたんだよな。わるいわるい。」 「・・・ううん、こちらこそ驚いてごめんなさい。・・・それでは、私用事がありますので。」 「ああ、またな。」 涼と雪絵は、真理を見送る。 そして見送った後、雪絵は涼に・・・ 「驚かせないでよ、涼。宣戦布告かと思ったじゃない。」 「そんなわけないだろ、普通の挨拶だよ。・・・表向きはね。」 不敵に笑う涼。 「やっぱり宣戦布告じゃない。正体ばれたらどうするのよ!」 「大丈夫だってば。」 「どこからその自信が出てくるのよ。神尾さんに、ばれたら許さないわよ。」 「わかってるさ。・・・さて俺たちも宴の準備に取り掛かるか。」 ―怪盗サイドも探偵サイドも、それぞれ考えがあるようだ。 絵に描いたようなライバル同士の彼らは、この深夜の舞踏会を通して、お互いを『進化』させているのかもしれない。 午後10時、東洋テレビでは、今夜11時からの番組の最終リハーサルをやっていた。真理を含めた警備の人たちは、それぞれの位置で待機し、午前零時を待っていた。 午後11時、東洋テレビでその番組が始まった頃、町外れの教会では・・・ 「遅いわ、ここから東洋テレビまで遠いのに・・・また遅刻なの?」 「だから遅刻してないってーの。」 突如雪絵の後ろに、怪盗チェリーがいた。 「驚かせないでよ。いっつも遅いし、急に後ろに立って声かけたり、驚かせたり・・・」 「わるいわるい、そう怒るなって。・・・それで真琴さん、だっけ?その人はどこに?」 「セントラルホテルみたいよ。」 「ホテル? どうして?」 「私には分からないわ。 でも、珍しいよね。初めてかしら?涼がそんなにもやる気なのは・・・」 「俺は、いつもやる気だよ! ・・・ただこの前のことがあるからな・・・」 「? 何か言った?」 「なんでもねぇよ。 ・・・なあ、雪絵。やっぱり楓さんは姉さんが怪盗チェリーってこと知ってるのかな?」 「・・・・・・たぶんね、でもわからないわ。」 「考えても仕方ないか。では、いってくるぜ。」 「いってらっしゃい。・・・気をつけてね。」 (ホントウに気をつけてね。何か嫌な予感がするの。) 午後11時55分、東洋テレビ。 「もうすぐね、今度こそ捕まえてみせるわ!」 そう燃える真理。そしてその真理に負けず劣らず燃えているのは、亜美で・・・。 「この『ロケット』はせっかくの切り札なんだから、絶対に離したりはしないわ。まして本人の元に返るだなんてとんでもない。」 ・・・ある意味燃えていた。 そして7月20日、午前零時。 「それでは、次のコーナーに・・・」 そう司会が進行していたその時、突然すべての照明がカットされ、スタッフの用意していない『ミラーボール』が点灯する。それと同時に怪盗チェリーがひそかに亜美に近付き、胸ポケットからペンダントを盗み出す。そしてすぐにその場を離れ、キャットウォークへと上がっていく。 「待ちなさい、まさか宇宙旅行って・・・」 真理は、事態に気づけ叫ぶ。 「・・・」 怪盗チェリーは答えない。 「まぁいいわ。そんなことは後でも聞けるものね。・・・天井のほうに逃げるのは結構ですけど、もう逃げられないわよ。すべて固めてあるんだから。」 「・・・・・・」 「どうしたの? もう、降参かしら?」 自信満々の様子の、真理。 「照明、復旧します。」 そうスタッフの声がして、消えていた照明が点灯される。 キャットウォーク、そこで真理が見たものは・・・・・・ 「や、やられたわ・・・」 真理はなんとも言えない悔しがる表情をする。 ・・・なんと怪盗チェリーの格好をしたダミー人形と、スピーカーのような物なのであった。 「スピーカー?」 『・・・Good Luck!名探偵君。それではまたお会いしましょう・・・・』 スピーカーからは、一言そう流れてきて沈黙した。 チッ、チッ、チッ・・・ 「何の音かしら?」 ・・・ボン! 突然、ダミー人形などが小爆発する。 「・・・証拠隠滅まで考えていたの?」 真理は唖然としていた。 ・・・その頃怪盗チェリーは、真琴がいるセントラルホテルにむかっていた。 7月20日、午前1時頃。 怪盗チェリーは、セントラルホテルの屋上についた。今夜はやけに満月が綺麗だ。 「さて、あとはこのペンダントを・・・」 柳真琴に、このペンダントを渡す。そうすれば今回の舞踏会の幕が下りるはずなのであるが・・ 「誰だ!?」 怪盗チェリー・・涼は、背後に気配を感じて叫ぶ。 そこにいたのは・・・・・・!? つ づ く・・・ ジャンル別一覧
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